病院のブランディング戦略

病院のブランディング戦略では最初に「信頼」を基本に経営ビジョンを打ちたて、関係者全員で価値を共有します。軸がぶれてはいけません。すべてのステークホルダーの共感を獲得し、選ばれる病院になるためには、病院がどこに向かうのか、望ましいイメージを描きアイデンティティを示さねばなりません。医療スタッフにとっても、これがしっかりしていれば医業サービスで迷いが生じても心配ありません。「あるべき姿」を常に確認できるためです。

次に、コア・コンピタンスを確立します。コア・コンピタンスとは、「顧客に対して、他には提供できないような利益もたらすことのできる、病院内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体」を指します。コア・コンピタンスを保有し、それを昇華させて付加価値を設けることで絶対的競争優位を築くことが可能となります。病院はこれに基づき、人材や医療サービスなど経営資源を集中させます。

コア・コンピタンスには独自性(オリジナリティ)が不可欠です。それを発揮するには、患者のセグメンテーションが有効となります。例えば、都市型病院では民間企業との提携し、企業の経営トップや管理職を重点顧客とする方法が考えられます。この場合、診療をはじめ健康管理やメンタル面でのカウンセリングなど自由診療を含めた対応が考えられます。

そしてポジショニングを設定します。これは、市場における病院独自の医療サービスの位置づけを示します。ポジショニングを明快にして医療サービスのイメージをはっきり伝え、認知度と好感度を高めるのです。ポジショニングでは、評価軸を検討することが重要です。評価軸の取り方により、類似した医療機関との違いが明快になるからです。

ポジショニングは、病院の経営ビジョンに基づかねばなりません。そして、患者ニーズを的確に捉えた座標軸を設定し、その中で他の医療機関との差別化を図ります。P・F・ドラッガーは著書「非営利組織の経営」(ダイヤモンド社、1991年)で 地域ニーズの重要性を述べています。「ある大変成功している非営利の病院グループは、総合的なコミュニティ・ホスピタルをつくろうとはしていない。まず、それぞれのコミュニティが必要としているものを調べる。あるコミュニティでは精神病院を必要とし、またあるコミュニティでは老人医療センターを必要としている。いずれも必要とされているのは専門病院である」。

「何をやるか」を決めるとともに「何をやらないか」の検討も必要です。集中と選択が無ければ明確なポジショニングが行えません。病院の現状は、総合サービスに偏り過ぎていると言われています。一般病床を選ぶか、療養病床にするかは、基本的な問題です。ニッチの市場を狙う戦略も熟考すべきでしょう。疾病治療とともに予防医学に力を注ぐ選択もあります。その地域の診療圏では、どのようなニーズがあって、今後どういうことが求められるのかを十分に検討してポジショニングを行うことです。

Copyright (C) 2009 Universal Design Consortium All Rights Reserved.