病院ブランディングの実践 - 安心・安全の確立

安心・安全の確立では、人的レベル、施設レベル、災害レベルでの「知覚化」を図ります。人的レベルにおける医療事故の原因には、医療倫理の欠如をはじめ技能の未熟性、熟練者の慣れ、施設や制度など環境が挙げられています。基本的こととはいえ、不注意やマニュアルの理解不足も原因の一つです。医療事故を防ぐには、医師をはじめ全てのスタッフが患者の生命を預かっているという意識がなによりも大切です。最近はチーム医療による安全管理体制が整いつつありますが、部門毎に医療事故の防止に努めることも不可欠です。全体としては、安全管理規程をもとに感染対策委員会などの委員会を設け、問題を抽出して改善を行います。このようなトレーニングやマニュアル、委員会活動では、実践に向けたシナリオを用意すると医療スタッフの「知覚化」効果が上がります。

施設では、ゾーニング、プランニング、ディテールの3つのレベルで取り組みます。ゾーニングでは、全体計画に基づき各部門を配置し、それぞれの清浄度を区別します。感染予防のために、清浄度が高い動線と低い動線の交差は避けねばなりません。プランニングでは部門の中の各諸室を配置し、換気や空気圧、空調、消毒、医療ガス、電気、水道といった設備を行います。そしてディテールにおいて、患者や医療スタッフの使い勝手や事故防止につながる環境を整えます。

災害対策では、水道や電気といったライフラインの確保が優先されます。さらに通信手段、食料の備蓄、医薬品や診療材料の備蓄、災害用備品、災害避難用テントなどを適切に活用できるように「知覚化」します。

内部では医療機器や家具などの転倒を防止し、緊急避難の動線を確保します。病院は災害発生時に、災害拠点として重要な責務を担います。駐車場を緊急避難や診療に活用するなど、空間のフレキシビリティも重要です。さらに大量輸送では道路の整備が、一刻を争う事態にはヘリポートが不可欠であり、これらを「知覚化」することで安心・安全面の病院ブランディグを達成します。

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